―虎(とら)を追(お)い出(だ)して―
一休さんが、えらいお殿様(とのさま)に呼(よ)ばれました。
お殿様は、一休さんがどのくらいかしこいか、试(ため)してみようと思ったのです。
「一休よ、お前の后(うし)ろに立っている屏风(びょうぶ)に、虎の絵(え)が描(か)いてある。あの虎を缚(しば)ってみよ。」
絵に描いてある虎を缚ることなんてできません。
でも、一休さんは縄(なわ)を持ってくると、こう言いました。
「どなたか、この虎を追い出してください。私が缚ってみせますから。」
すると、お殿様は手をぽんと打って、言いました。
「なるほど、うわさのとおり、一休はかしこいな。感心(かんしん)したぞ。」
そして、ご褒美(ほうび)をたくさんやったということです。
