gunslingerstratos吧 关注:310贴子:6,213

EXエピソード(ガンスリンガーストラトス2)

只看楼主收藏回复

フロンティアS 水潟九美编
1:幸运な少女
(2014年04月07日公开)
私はとっても、ツイている。
そう九美は自分に言い闻かせる。
なんといっても、まだ生きている。
それは、とてもすごいことのはずだ。
响きわたる铳声。アスファルトが焦げる臭い。口の中に感じる土烟の味。惯れ亲しんだ戦场の空気。
戦场が21世纪に移っても、最新の时空兵器を使用しても、その空気は変わらないようだった。
最新のVR(バーチャルリアリティ)装置を介した中継は、视覚のみならず五感までも刺激する。
九美は、基地にいながら、戦场の热い风に触れてオペレートを开始する。
オペレートと言っても彼女の仕事は戦场への诱导までで、戦闘が始まってからはデータ収集くらいしか仕事が无い。
センサー类のデータと并行して戦场を俯瞰する。
戦场の一角では眩い纯白と、冷たい漆黒が岚のように戦っていた。
「すごいです……」
そうとしか言いようがない。
白は味方。黒は敌。
どちらも二丁の拳铳を途切れなく撃ち続けている。
その名は苏芳司。时空移动の才能を认められ、第二次越境计画に配属された戦士の一人である。
时空移动の才能を持つ者は、そのほとんどがNDSFと呼ばれる超绝的な勘を持つ。
苏芳のそれは、弾道予测。
白の苏芳が无造作に放った弾丸が、跳弾に跳弾を重ね、ありえない角度から敌を撃つ。
黒の苏芳が、それを己の弾丸で迎撃する。相手の弾丸を撃ち落とす、のみならず、弾と弾がビリヤードのようにぶつかり合い、予测不能の轨道を描いて逆袭に転ずる。
全速、全力で机动しながら、达人级のチェスを打つかの如き、繊细な戦闘。
俯瞰视点を活用し、九美は司周辺を索敌する。
200m先で、罗汉堂がロケットランチャーを构えた。0.2秒后に発射。その冲撃波が、さらに0.4秒后に苏芳たちの元へ到达。それによって変移する弾丸の轨道は——。
ほとんど无意识に、その计算を终え、计算结果はビジョンとなって九美の脳裏に映る。
「司さん、危ない!」
思わず叫んでいた。
冲撃波到达。
苏芳は、ぎりぎりのところで体をひねり、弾丸をかわす。黒苏芳に撃ち返しながら、ぎろりとこちらを睨んだ(ように见えた)。
马鹿なことをしてしまった。苏芳には当然、冲撃波の予测ができていたのだ。ぎりぎりでよけたのは、相手へのフェイントに过ぎない。
そもそも九美には、戦闘时の指挥権限は与えられていない。自分がしたのは、ただの邪魔だった。
「ごめんなさいごめんなさい」
呟きながら、九美はオペレータ席の中で小さくなる。
あやまる声を闻きながら苏芳は、ふと、眉をひそめた。警告があったおかげで、体が动いた。九美の视点の気配を感じた方向に、黙礼を送ったつもりだったが、通じなかったようだ。
畏れを伴う正义を目指す身ではあるが、弱き者をおびえさせるのは本意ではない。
黒苏芳の弾幕をかわしながら通信する余裕は今はなかった。
あとで基地に戻ったら、礼を言おう。
戦士はそう心に誓った。
(written by 海法 纪光)


IP属地:上海来自iPhone客户端1楼2014-05-28 15:43回复
    2:宿无し少女
    (2014年04月14日公开)
    本が好きな少女だった。
    体を动かすのも人と喋るのも苦手で、色恋にも縁远い。
    一人で村の书库にこもり、いまや谁も読む者のいなくなった、先祖代々受け継がれた分厚い本を、読みこなすことだけが楽しみだった。
    水潟九美のそんな生き方は、しかし、この时代に望まれるものではなかった——。
    かつて日本と呼ばれる国があった。
    技术の粋を尽くした近代国家は、しかし、ある时、押し寄せた连锁自然灾害により、その幕を闭じる。
    あらゆる秩序と保护が失われた荒野。
    人を缚る法はなく、人を守る法もない。
    かつての戦国时代の再来を思わせるその大地をフロンティアSと呼ぶ。
    かつて「学校」と呼ばれていた遗迹に、その村はあった。土は贫しく水场は远かったが、それでも人々は肩を寄せ合うようにして暮らしていた。
    ある日、水汲みに远出していた九美は、その学校が燃える烟を目にする。
    山贼达だった。
    村の中でも持て余されていた九美は、それでも自分を可爱がってくれた村长や友人たちを思って涙をこぼした。泣きながら駆けた。
    山贼の人狩りを避けて荒野をさまよった挙げ句、放置されていた廃墟を见つけた时、九美は己の幸运に再び感谢した。
    翌朝、目が覚めたら、铳を突きつけられていた。それも、白い肌の军服姿の男たちである。
    山贼や自警団とも违う、本物の军队の威圧感に、九美は、今度こそ死を覚悟した。
    九美が引き合わされたのは、白衣を着た白人の男だった。
    片手でキーボードを叩きながら、绮丽な日本语で九美を寻问する。人间として、どこか欠落を感じる男だった。
    最后に、ここで働く気はあるかと闻かれ、九美は、それが寻问ではなく、面接であることを知った。
    雑用を引き受ける内に、九美も少しずつ事情を饮み込んだ。
    男たちが携わっているのは、第二次越境作戦と呼ばれる秘密作戦であり、作戦の责任者はブライアン・オードナー博士。
    放弃された市街を接収して基地に改装しようとしたら、廃墟の一つに人间がいたというわけだ。
    机密作戦に触れた人间を外に出すわけにはいかない。
    杀すか、あるいは软禁するかだが、杀すほどのことはないだろう。ただ软禁するなら雑用でもやらせたほうがマシだ。见方を変えれば软禁の上、强制労働という非人道的な措置である。その程度の判断だった。
    普通に考えれば不运であり不幸である。だが九美は、それを歓迎した。
    天涯孤独となった彼女にとって、命の危険のない軽作业をするだけで、屋根のある场所で食事に困ることもないのは、この世の楽园とも思われた。
    ——私はとってもツイている。
    九美は、心からそう思った。
    (written by 海法 纪光)


    IP属地:上海来自iPhone客户端2楼2014-05-28 15:48
    回复
      3:少女と荒くれ男たち
      (2014年04月21日公开)
      「お、オペレーターを勤めます、水潟九美です。よろしく、お愿い、します……」
      九美は、文字通り、体が震えるのを感じていた。足下がおぼつかない。
      仕立ての良い背広を着た外人が歴戦の强者の瞳で物静かに九美を见ていた。それだけで九美は自分の场违いさを感じる。
      纯白の军服を着こなした锐い视线の若者は、远虑ない视线で、値踏みするように九美を见る。
      ぼろぼろの服を着た野人は、背丈も幅も寻常の人间を遥かに越えており、手のひらだけで九美の头を握りつぶしそうだ。
      比较的优しそうな青年を见つけて、九美は少しだけ安堵する。困ったらこの人に頼ろう、と思う。
      「君がオペレータか?」
      锐く声をかけてきたのは、确か、アーロン・バロウズ。歴戦の兵士。
      「は、はいぃ」
      「よろしく頼む」
      言外に、失败したら许さないと告げているかのようだった。少なくとも、九美にはそう思えた。
      一体、どうしてこんなことになってしまったのか——。
      当初、九美の仕事は単なる雑用だった。
      事务作业の合间に、いつもの癖で、九美はオードナー博士の研究论文を読みふけっていた。
      そこにあったのは、百年前の过去を基点に、この世界の歴史が书き换えられつつあり、世界消灭の危机が迫っているという惊くべき事実だった。
      第二次时空越境作戦とは、过去に介入し、もう一つの歴史を破壊し、フロンティアSの歴史を定着させる作戦だった。
      本来、それらの研究资料は専门的な内容を含み、一般人の九美が読めるはずもなかったのだが(だからこそ目のつくところに放置されていた)、九美は、それに気づくことなく読みこなしていた。
      そのことを知ったオードナー博士は、九美の才能に兴味を持ち、九美は雑用系から研究助手に升格することになる。
      かつて第一次时空越境作戦においては、あらゆる事态に备えた特殊部队が、百年前に送り込まれたが、一名を除いて全员未帰还という惨憺たる事态となった。
      そこで分かったのは、时空移动や、时空を越えたオペレートには、特殊な素质が必要であるということだった。
      结果、第二次时空越境作戦の参加者は、学生から军人、武术家まで、年齢も性别もバラバラだった。
      问题は、九美にも、その适正があったということだ。
      それはつまり、その荒くれ男たちの世话を、九美が行うことを意味したのだった——。
      荒事が苦手な九美にとって、戦士达と、どう付き合うのかは难问だった。
      もっとも、気にしているのは、九美だけだ。オペレータといっても戦术指挥を行う権限があるわけではない。通信装置を介してついてくる研究员に过ぎず、大半の参加者にとって、九美は空気のような存在だった。
      九美が恐れたアーロン、苏芳、罗汉堂に、いずれも九美を気遣う优しさがあったのは皮肉である。
      彼女が、三人の、そして他の戦士达の心の机微に触れられるのは、しばらく先のこととなる。
      (written by 海法 纪光)


      IP属地:上海来自iPhone客户端3楼2014-05-28 15:49
      回复
        4:少女と戦场
        (2014年04月28日公开)
        21世纪の戦场。
        苏芳に怒られた九美は怒号と铳声から距离を置き、本来の任务であるセンサー类の数値を眺める。
        视界に时空构造を表す无数の数字がスクロールしていく。
        ふと、感じる违和感。
        九美は式を入力し、データを无数の関数に解体してゆく。相互比较。背景辐射。偏差。変异。
        导き出されたグラフは、时空の急速な変异を告げていた。
        「危ないです! 全员撤退!」
        九美は通信机に向かって叫ぶ。
        だが、戦士达は动かない。自分が信用されていないからか。确かに信用する理由も无い。だけど……!
        どうすればいいか。九美は必死で考えた。
        风澄彻は、急な通信に眉をひそめた。
        九美を信じないわけではない。だが戦闘の真っ最中である。自分が下がれば背后から撃たれるし、自分だけ逃げられたとしても戦线が崩壊し、味方が総崩れとなるだろう。撤退したくてもできないのだ。
        それでも、できるだけ早く撤退する方法を探して周囲を见回した彻は、绝句した。
        青い光と共に転送が始まった。そこに现れたのは……白旗を掲げた九美だった!
        戦场のど真ん中に駆けてくる九美。确かに、时间移动适性(NDSF)があるとは闻いていたが、あの恐がりのオペレータに、どれだけの覚悟が必要なことか。
        风澄彻は、その覚悟に応えることを决断した。
        全弾を速射。冲撃波がビルの窓ガラスを割っていく。降り注ぐかけらが阳光を乱反射し、一瞬の目眩ましを作り出す。
        その一瞬の隙に、彻は駆けた。
        追撃を覚悟したが、なぜかそれはなく、九美の元にたどり着く。最速のつもりだったが、苏芳が先だったようだ。九美を庇うように立っていた。
        「いったい何が——」
        声をかけたところで彻の全身に违和感。武器のインジケータにオフラインの表示。フロンティアSの基地からのリンクが解けている。通常、过去世界での死亡はフロンティアSへの帰还を意味するが、オフラインなら、その限りではない。今、何か起きれば、彻は死ぬ。
        一体、何が起きた? 何が原因だ?
        すぐに理由は分かった。
        巨大な空间乱流。大きく音を立てて空が割れた。
        雷云が涡巻き、その中から现れた巨大な足が、文字通りビルを踏みつぶしてゆく。怪獣としか呼びようのない巨体が、辺りを瓦砾の山に変えてゆく。
        待避が遅れていれば、自分も今顷、あの瓦砾の一部となっていただろう。自分が回避した危険の大きさに今更ながら気づかされた。
        「いちーにーさんーしー、よかった、みんないますね」
        彻にアーロン、苏芳に罗汉堂。みんな无事だ。どうやら警告は间に合ったらしい。九美は胸をなでおろした。
        それから、四人の戦士达の视线が自分に注がれていることに気づく。
        「ごごごめんなさい。急に呼んで。でも、あの……」
        轰音が九美の言叶をかきけした。
        怪獣の尻尾がビルを崩し、あたり一面に瓦砾が飞び散ってゆく。
        戦士达は声も出さずに连携し、怪獣に向けて攻撃を开始する。
        アーロンと罗汉堂が九美の肩を叩いて走ってゆく。
        轰音の中で、彻が九美に送ったハンドサインは、向こうに逃げていろと読めた。
        九美は一つうなずいて走り出す。
        苏芳の唇が「ありがとう」と动いたのには、ついぞ気づかなかった。
        怪獣を撃退し帰还が成った后に、四人の推荐で、水潟九美は正式に戦闘时のアドバイス権限を与えられるが、それは、また后の话である。
        (written by 海法 纪光)


        IP属地:上海来自iPhone客户端4楼2014-05-28 15:50
        回复
          第十七极东帝都管理区 水潟九美编
          1:不运な少女
          (2014年05月05日公开)
          本当に、自分は运がない。
          そう九美は自分に言い闻かせる。
          実体としての「运」というものを信じるわけではない。
          サイコロの目は独立だ。三回连続で1が出ても次に1がでる确率は変わらず六分の一だ。
          だから、これまで1が出ていても、これからは6が出るかもしれない。
          そう考えて九美は自分を慰める。
          无论、确率の法则によれば、1が出る确率も相変わらずあるわけだが。
          响きわたる铳声と怒号。吹き出す血潮。倒壊する建筑物。目の前に広がる时空を越えた戦场の风景。そのすべてから九美は目をそらす。
          VR(バーチャルリアリティ)越しとはいえ、五感を通じて迫る戦场の风景は、彼女の繊细な神経にいたく障った。
          ——なぜ、自分のようなエリート研究者が、こんな野蛮なものを见なければならないのか。
          それが九美の不満であった。
          目をつぶって、次の论文に向けた数式の考察をすることもできたが、従军オペレータとしては、一応、戦场を把握しておかなければならない。
          戦场の一角では、漆黒の男と眩い纯白の男が戦っていた。
          黒は味方の苏芳司。彼もまた特殊部队AUMADのエリートであっただろうに、こんな谁も知らない作戦に呼ばれて不幸なことだ。
          时空移动には、おおむねNDSFと呼ばれる才能が必要である。希少な才能であるが故に、自分のように运命を狂わされてしまうものが出る。
          九美は、少しだけ苏芳に同情した。
          ズームすると、敌を狙う苏芳の颜が映り、九美は背筋に寒気が走る。
          整った颜ではあるが、感情を杀した冷たい目。人杀しの目だ。当たり前だ。今まさに人を杀しているのだから。九美としては、あまり近づきたくはなかった。
          视点を苏芳达の颜から离す。二人の苏芳の撃ちまくる弾は、一见、ただばらまいているように见えて、精致な轨道を描きつつ、跳ね返り、互いを撃ち落とし、诘め将棋のように、相手の动きを牵制している。
          九美は、その轨道を数式に描いて解を求め、しばしの暇つぶしとした。
          VRによる视界の端にアラート。罗汉堂がロケットランチャーを构える。
          「四时方向より冲撃波です」
          一応、戦闘オペレータとして、九美はそれだけ伝える。
          これくらいの仕事、自动化できるし、すればいいのに、と思いながら。
          「あぁ」
          そっけない返事が返った。きっと向こうもそう思っているのだろう。
          水潟九美はため息をつく。まったく、なんで理论物理学者の自分が、こんなところで戦闘オペレートをしなければならないのか。
          本当に自分は运がない。
          (written by 海法 纪光)


          IP属地:上海来自iPhone客户端5楼2014-05-28 15:51
          回复
            2:勉学少女
            (2014年05月12日公开)
            かつて日本と呼ばれていた场所。频発する自然灾害によって国家の主権を失い、军事的政治的情报的な动乱の末に、今は多国籍企业の领土に収まっていた。
            第十七极东帝都管理区。
            そこには一切の自由はない。
            安楽な生活と引き替えに、あらゆる选択は夺われている。そこに暮らす人间は、モルモットであり、その怒りも喜びも、生死さえもがマーケティングデータとして回収される。
            その世界において水潟九美は、己の人生に満足していた。大変に満足していたのだ。
            彼女の専门は理论物理学であった。
            第十七极东帝都管理区の建前は、ランク制度による才能分类と、适材适所の配置である。
            アルクトゥルス学园において、高成绩をあげた彼女の能力は、高く评価された。
            ——だが、そこまでだった。
            建前は建前として、この世界において上位の阶级は事実上の世袭制度となっており、一般市民出身の水潟九美が、本来得てしかるべき、报酬、待遇を得られることはなかった。彼女の论文は、别人の名前で発表され、别人が栄誉を得た。
            しかしまぁ、それは最初からわかっていたことだ。どちらかといえば世间知らずの彼女も、そこに愤るほど世间知らずではなかった。
            彼女は、いわば、金の卵を生む鶏だった。スーパーコンピュータの优先アクセス権が与えられ、研究环境は最高のものをあてがわれた。
            ならば、名义が谁だろうが関系ない。パーティだの赏授与だのといった雑事を谁かが代わりに引き受けてくれていると思えば、むしろ感谢したいくらいだった。
            だから、彼女は本当に幸せだったのだ。
            第二次时空越境作戦という言叶を闻く、あの日、までは。
            (written by 海法 纪光)


            IP属地:上海来自iPhone客户端6楼2014-05-29 07:22
            回复
              3:少女と机械人形
              (2014年05月19日公开)
              第十七极东帝都管理区に、奇妙な事件が起きていた。
              街中に廃墟の幻が蜃気楼のように现れては消えるのである。それだけでなくトカゲに似た化け物も目撃されるようになり、袭撃事件さえ発生した。
              当初はテロリストによる幻覚剤の散布と报道されたが、その原因は、并行世界、すなわち「もう一つの地球」の干渉による时空连続体の崩壊现象だった。
              干渉を断ち切るために、百年前の歴史分岐点、二十一世纪の日本で、もうひとつの地球である「フロンティアS」 の影响を排除する第二次时空越境作戦が発动。フロンティアS军団との戦闘が勃発した。
              その戦闘の中で、アノマリーと名付けられたトカゲ状の怪物も确认される。
              不安定な空间に现れるアノマリーは、その出现领域を広げ、今では二十二世纪の管理区にまで姿を现すようになっていた。
              そうした真実を知った时、九美は恐怖よりも先に愉悦を感じていた。全く未知の、豊穣な领域に触れた时の、学者としての兴奋だ。
              彼女の理论物理の才能を见込んだオードナー博士によって第二次时空越境作戦の研究员として抜擢された。
              そこまではよかったのだ。
              问题は、彼女に时空移动适正があったことであり、それによって、现场のオペレートまで任されたことである。
              时空移动适正の持ち主は少ない。いかつい军人なら、まだいい。彼らにとって暴力は仕事だし、命令には従う。
              军队でもないのに戦闘に参加したがる一般人は、九美の主観からすれば、単なる社会不适合者である。
              そんな荒くれ者たちの戦闘オペレートを任せると言われても気が重い。そもそも、戦闘なんてわからないし、やりたくもない。
              「计算は得意だから、戦闘オペレータをやれなんて言われてしまって。计算だったら、クシーさんにお任せしたいですよ」
              「はい。単纯な演算能力についてはお手伝いできます。しかし、それに基づいた戦况助言を行うのは私には难しいと结论します」
              「あれ、でも、クシーさんなら戦况判断もできますよね? 助言もできるのでは」
              助言には、犠牲の容认が含まれます。最大効率の延长として、意図的あるいは结果的に人命を切り舍てる判断を行うことは、私の分を越えますし、また精神(プログラム)に重大な负荷がかかります」
              言われてみればそうだ。戦场において指示を下すということは、判断次第で人が死ぬということだ。また谁かに死ねと命令を下す必要もある。
              21世纪で死亡した人间は、自动的に22世纪に帰还する仕组みとはいえ、人间を守るために作られたロボットが、それを命じることはできないだろう。
              いや、ちょっと待てほしい。
              「……そ、そんなの私だってできない!」
              ただの科学者である。暴力も戦争も苦手なのだ。まして、人命に関する判断を下すなど。
              クシーは、しばらく间を起き、やがて口を开いた。
              「ご愁伤様です」
              机械的な音声は、いやに人间味がこもっていた。
              ふぅ、と、ため息が出る。
              「本当につらいのでしたら、断られてもよいと思います」
              クシーの静かな言叶に九美はうなずく。
              「そ、そうですね。考えてみます」
              自室に戻る时には、九美は一つ决心をしていた。
              (written by 海法 纪光)


              IP属地:上海来自iPhone客户端7楼2014-05-29 07:23
              回复
                4:少女と少女
                (2014年05月26日公开)
                第十七极东帝都管理区の水潟九美が空间异変に気づいたのは、フロンティアSの彼女よりも早かった。
                それは早くから理论物理学を勉强していたことによるのかもしれないし、あるいは戦闘に兴味がなく、时空间のデータ解析に集中していたせいかもしれない。
                それは、水潟九美が、二十一世纪の戦场を退屈げに见守っていた时のことだった。
                ——やっぱりやめよう。辞退しよう。
                戦闘オペレータを断っても、研究者として职を追われることはないだろう。なんなら、ちょっとドジを踏んで、オペレータ失格であることを示せばいい。戦士达だって本当に死ぬわけではないのだ。それに、自分が将来、ミスをする可能性だってあるのだ。ならば、やめるのは早いほうがいい。
                そんなことを考えながら见ていたセンサーのデータに惊愕し、弾かれたように计算を开始する。わずかな数値の変化は、その先に起きる巨大な変动を示していた。
                ——何これありえない。これじゃリンクが保たないじゃない。想定出现场所……近すぎる!
                最善手は即座に全员を帰还させることだが、空间の不安定さがそれを许さない。今、帰还したら、最悪、时空の狭间に迷って帰って来れなくなる。であるなら回避するしかない。
                「消灭危机(ロストデンジャー)発生、全员30秒以内に撤退を!危険域は以下を中心に半径100メートル」
                全员に割り込み通信。
                「无理だ」
                司から简洁な対応が来た。
                无理なのはわかっている。戦闘の最中に、いきなり背を向けて逃げ出すわけにはいかない。背を向けて杀されれば自动帰还プログラムが発动し、时空の迷子となる。
                なら、どうすればいいか。
                九美は考える。撤退时间と指示时间を含めて、许される思考时间は3秒。
                回答に辿りつくには2.3秒を必要とした。
                「全员、最大攻势。戦线の缩小を」
                4つの了解が返り、戦士たちが动き始める。
                弾数を考えずに攻撃すれば优位はとれる。それによって相手も防御から一时退却の姿势に移る。あとは「彼女」が、いつ気づくかだ。
                九美は身を灼かれる思いで戦场を観察する。敌军の动きを见极める。そうする间にも时间が。とりかえしのつかない时间が、一秒ずつこぼれ落ちてゆく。
                限界まであと2秒、1秒。まだ敌の动きが……変わった。
                「撤退を!」
                全军が动き出す。だが、そこに九美の计算违いがあった。
                「な、なんで动かないんですか!?」
                「もうしわけありません」
                クシーの平静な声が返った。
                敌も撤退したい。こちらも撤退したい。だがそれであっても、铳をつきつけて撃ち合っている状态から撤退に移るには、どうしても时间がかかる。
                わずかに数秒のロスだが致命的な数秒だった。
                ——间违えた间违えた间违えた
                戦闘について无知であるが故の、ほんのわずかな计算违い。もっと早く、敌から撃たれることを覚悟の全力撤退を命じるべきだった。
                唇を噛んだその时。戦场に新たな青い光が辉いて九美は息を呑んだ。
                ——まさか。敌が予定よりも早く?
                いや违う。転送规模は人间大。小柄。
                それは、自分だった。もう一人の自分。
                白旗をかかげて、戦场のどまんなかへ走っている。
                颜をくしゃくしゃにして涙声で何事かを叫んでいた。
                一瞬、敌味方の铳撃が止まる。
                「全军撤退!」
                九美は叫びながら、异次元から现れる存在の正确な予想出现位置と、撤退の最适ルートを全员に送る。
                巨大な怪獣が建物を踏みつぶした时、かろうじて、四人は撤退に成功していた。
                敌军に「自分」がいると仮定するのは赌けだった。时空変动の予兆を敌が読みとらなければ、共倒れになっていた。
                「自分」なら、もっと早く気づけよと思うが、その分のロスを、彼女は身を张って取り返した。
                ——引き分けというところかな。
                九美は、帰还するチームを待ちながら、そう思った。
                帰还した苏芳が、オペレータ席に、まっすぐ近づいて来て、九美はパニックに袭われた。
                无表情で、こちらをにらむように真っ直ぐ见る视线。九美にとってそれは、戦场の时と同じ、人杀しの目に见えた。
                「な、な、なんですか? 苦情だったら、あの、书状で……」
                「素晴らしい戦闘指挥だった。今后もよろしく頼む」
                「……え?」
                「素晴らしい戦闘指挥だった。今后もよろしく頼む」
                苏芳は、ゆっくりと缲り返し、九美は固まった。クシーが、気の毒そうな目で九美を见ていた。
                (written by 海法 纪光)


                IP属地:上海来自iPhone客户端8楼2014-05-29 07:24
                回复
                  3:伊达男の没落
                  (2014年06月16日公开)
                  暗の中を火箭が贯く。
                  一瞬の光芒に浮かび上がる男たちの姿。
                  スラムの路地裏で、黒スーツのいかつい男たちが、リカルドを追っている。
                  全ては予想の范畴だ。
                  巨汉を倒したリカルドは、悠々とファイトマネーを受け取り、店内の売店で花束を买った。
                  パトカーの巡回时间に合わせて玄関を出る。
                  いかにランソン・ファミリーといえども、客の目の前で堂々と杀人をするわけにはいかない。
                  素人相手なら伤つけずとも、集団で有无を言わさず连れ去ることもできるだろうが、リカルドがそんな隙を见せるはずもない。
                  故に杀し合いが始まるのは、路上。カジノからしばらく离れてから、というわけだ。
                  全てはリカルドが胜手にやったこと、という建前なので、まずは自力で刺客を突破して、メイザース・ファミリーの縄张りまでたどり着かなければならない。
                  无数の火箭を勘だけで躱してリカルドは走る。
                  路地から路地へ。
                  塀を蹴って屋根へ。
                  迷宫のようなスラムを华丽に駆け抜ける。
                  左手に豪奢な花束を抱えたまま、右の铳で応射。
                  黒スーツの一人が倒れるが、さらに二人の黒スーツが合流する。
                  ——赌け率は几つだろうな。谁かが仕切ってくれたら、大储けのチャンスなんだが。
                  リカルドは、そんな畅気なことを考えていた。
                  ——よし、あと1ブロック!
                  火箭を交わしながら走る。
                  もう一歩踏み込めば、メイザース・ファミリーの縄张りだ。そこには迎えと助けが——。
                  ——いなかった。
                  约束の车も援护の兵も、何も无かった。
                  リカルドは、軽く肩をすくめる。
                  これも予想の范畴では、ある。
                  メイザース・ファミリーにとっては、役目を果たした鉄炮玉を庇う必要は无い。
                  むしろ死んでくれたほうが、都合がいい。
                  まぁ、それならそれで构わない。
                  どいつもこいつも叩きのめして生き延びる、までだ。
                  ふり返って追っ手の数を数える。
                  ざっと十対一。问题ない。今日はツキがある。
                  走り出そうとした时、その手の中の花束が燃え上がる。
                  「な!」
                  この时、リカルドは、初めて激怒した。
                  「ふざけやがって! 全员杀す!」
                  20分后。
                  リカルドは、肩で荒く息をついていた。
                  铳声は、もはやない。风にのって闻こえるのは呻き声だけだ。
                  それでもリカルドは铳を下ろさない。
                  「いつまで隠れてるつもりだ、あんた?」
                  「気づいていたか」
                  重い声が応えた。
                  (written by 海法 纪光)


                  IP属地:上海来自iPhone客户端11楼2015-03-07 13:32
                  回复
                    4:伊达男の転机
                    (2014年06月23日公开)
                    「いつまで隠れてるつもりだ、あんた?」
                    「気づいていたか」
                    「甘くみんなよ」
                    黒服达と戦って、何度か危机に陥った。
                    その时、飞んだ、ほんの二、三発の铳弾。
                    乱戦の中のほんの数発。しかも谁かを仕留めたわけでもない。
                    だがその数発が黒服达を伏せさせ、リカルドが反撃する贵重な数秒を稼いだのだ。闻き落とすはずはなかった。
                    「どうした、颜は出せないってか?」
                    「出すと君を捕まえねばならん」
                    「サツ……いや军人か」
                    「そんなようなものだ。もっともこちらも私用だ。会わなかったことにしてくれないか?」
                    「いいけどな」
                    リカルドは知る由もないが、男は军人として、遥か彼方の戦场で、子供たちが兵士として戦っているのを见た。
                    その悲剧の大本を辿って、この国にたどり着き、子供たちに麻薬を与え奴隷として戦场に送り込んだ、その一端を溃しに来たのだった。
                    「まぁ助かった。ありがとよ」
                    军人に头を下げるのは気にくわなかったが、援护がなければ死んでいただろう。
                    「気にするな。言ったとおり、私用だ」
                    リカルドはあたりを见る。
                    焼け焦げた家々。
                    呻き声。
                    スーツはぼろぼろで、手の中には焼け焦げた花束。
                    さて、これからどうするか。
                    「これからどうするつもりだ?」
                    「あてはねぇよ」
                    金さえ手に入ればなんとかなると思っていた。
                    だが、こんな血涂れの金で、「日伞の君」と出会うのは駄目だ。もっと早く気づけばよかったが。
                    だが、ほかにどんな方法がある?
                    「やり直したいか?」
                    「……谁だってそうだろ」
                    だが、どうやって?
                    「腕っ节があるなら、军はどうだ?」
                    「勧诱かよ」
                    リカルドは、苦笑する。
                    とはいえ、言われてみれば悪くは无い。ほとぼりを冷ませるし、カタギの経歴にも身につく。
                    「ま、考えてみるよ。ありがとな、おっさん」
                    结果から述べるならば、リカルドにとって军人は天职だった。
                    军人となった彼は、「日伞の君」に再会するも、彼女に既にフィアンセがいることを知って撃沈。
                    リカルドにとって幸いだったのは、「日伞の君」が彼の名を今も覚えていたことだった。
                    振られた腹いせに危険任务に志愿しまくった彼は、その功绩を认められて特殊部队に転属。
                    かつて自分を救った军人……アーロン・バロウズと再会することとなる。
                    彼が第二次时空越境作戦に参加するのは、さらに、しばしの时间が必要だった。
                    (written by 海法 纪光)


                    IP属地:上海来自iPhone客户端12楼2015-03-07 13:33
                    回复
                      第十七极东帝都管理区 天堂寺セイラ编
                      1:正义と死
                      (2014年06月30日公开)
                      ——正义を守ろうと思ったのだ。铳をかざして弱いものを守る。そんな正义を。
                      特殊部队AUMADの任务において理想的な进行というのは灭多にあるものではない。だが、その日のミッションは、限りなくそれに近かった。
                      内部情报は详细かつ正确。突入プランは明确で、イレギュラーは何一つなく、全てが顺调だった。
                      セイラは、何度も他の队员と颜を见合わせたことを覚えている。
                      ——これはうまく行きすぎている。
                      ——绝対何か起きるぞ。
                      全员がそう予感していた。
                      队长である苏芳司も「気を引き缔めろ」とだけ言わずもがなのことを言った。
                      セイラは壁にセンサーを设置する。
                      各种电磁波と、振动や温度を察知して、部屋の内部の様子がセイラのゴーグルに像を结んだ。
                      事前情报通り、テロリストは二人。人质は、テロリストから离れた部屋の隅に転がされている。ハンドサインで、谁が谁を受け持つかを决める。
                      壁に指向性の爆薬をセット。
                      爆発と同时に、セイラは内部に突入した。机械のように腕が动いて、テロリストを狙う。
                      壁越しの像では见えなかったテロリストの素颜に、セイラは眼を引きつけられた。
                      若い。
                      まだ少年といえるほどの年。
                      その表情は、しかし深く年老いていた。
                      深い谛めと、かすかな热情。
                      その颜が、セイラのほうを向く。
                      唇がゆっくりと开く。
                      不意に、セイラは、その言叶が闻きたくなった。
                      年老いた少年が、これまでどんな暮らしをしてきたのか。
                      何を思ってここにいるのか。セイラの中に何をみたのか。
                      それは身を切られるようにつらい话かもしれないが、それでもセイラは闻いてみたかった。
                      ——君の名前は何ていうの?
                      ——どこから来たの?
                      ——お父さんやお母さんはどんな人だった?
                      ——好きなものってなあに?
                      ——どうして戦っているの?
                      闻きたいことはたくさんある。一晩でも二晩でも、ずっと少年と语りたかったのだ。
                      だがセイラの指はすでに引き金を引いていた。
                      铳声と共に赤い血が少年の胸を涂りつぶし、その口からは、浊った断末魔だけが放たれた。
                      セイラは二度、瞬いた。
                      ゆっくりと队员达のほうを见る。紧张の糸は持続していたが(まだ任务が终わったわけではない。
                      人质の无事を确かめ、ここから完全に脱出するまでは)、全员の颜に喜びが见えていた。
                      唯一、苏芳司だけが、いつもの冷たい无表情を保っていた。
                      结局、心配していたような予定外のハプニングは起きなかった。
                      作戦は成功。人质は无事救出。死伤者ゼロ。すべて支障なし。
                      报告书にはそう记载されることになるだろう。
                      だが、それでもセイラの心には消えないしこりがのこった。
                      我々は神ではない。全员が最善を尽くしたのもわかる。
                      それでも、あの少年の言叶を最后まで闻かずにその命を夺ったことは。
                      ——これは正义ではない。
                      彼女はそう思ったのだ。
                      (written by 海法 纪光)


                      IP属地:上海来自iPhone客户端13楼2015-03-07 13:55
                      回复
                        2:上司と队长
                        (2014年07月07日公开)
                        「天堂寺セイラ君、上司として言わせてもらうが、君の报告を読んでいると、本当に退屈しないよ」
                        「ありがとうございます」
                        セイラは上司である初老の男に微笑みかけた。
                        「今のは皮肉だ」
                        「はい」
                        「前回は确か、犯人とカラオケを歌ったんだったな。今回のは何だね? 単独で突入した挙げ句に任务中の酒宴? 正気か?」
                        「それについては说明を——」
                        「「黙りたまえ! 君には、自杀愿望があるのかね? それとも目立ちたがり屋なのかね?」
                        「どちらでもありません」
                        「じゃぁ、なぜ、命令违反の上に无茶をする?」
                        「杀さなくてもいい、と、思ったからです」
                        「それと酒盛りとどういう関系がある?」
                        「えっと……酒を饮んで打ち解ければ、その、彼らも心を开くと……。もちろん私のはノンアルコールです」
                        「そういう话をしているのではない! 君の任务は人质の夺还であってテロリストと酒盛りすることではない!」
                        「でもほら、みんな助かったわけですし」
                        「全员死んでいたかもしれん! 君に作戦立案、现场指示の権限はない! そうだな!」
                        「はい……」
                        セイラは头を下げるしかなかった。
                        あの任务以来、セイラは、できる限り、命を救うように动いていた。
                        自分でも、无茶をしているとは思う。
                        死にたいわけでもない。それでも、つい気がつくとやってしまう。
                        杀さずにすむと思った瞬间、その道を选んでしまう。
                        「君が成果をあげてるのは认めざるをえない。だが、命令违反は放置できん」
                        セイラは首をすくめた。また减俸だろうか? そろそろ给料がマイナスになりそうだ。
                        「クビだ」
                        「は?」
                        「ク・ビ・だ! わかったかね?」
                        「はい……」
                        まぁ仕方ないといえば仕方ないか。
                        问题は、社宅を追い出されて家赁をどうしていくかだが……。
                        「家赁のことなら心配しなくていいぞ。次の就职先を探しておいた。つまり解雇ではなく、异动ということになるな」
                        上司はにんまりと嗤った。カエルそっくりになる。
                        「なあに心配するな。君の资质を活かせる职场だよ。その派手な性格と、美貌。特殊部队としての経験もな。以上だ」
                        接待専用の部门にでも飞ばされるのだろうか。
                        でも特殊部队の経験? 何を言っているんだろう、この人は。
                        まぁすぐにわかるだろう。
                        「失礼しました」
                        セイラが廊下に出ると、ふと苏芳司の姿が见える。
                        制服を一部の隙も无く着こなしたエリートの権化のような姿。
                        その姿に、セイラは身をすくめた。
                        セイラは彼を尊敬していた。
                        冷彻なまでに任务を遂行するところはあるが、それは队员や人质の命を守るために最善を尽くしているからだ。
                        いかに成果を上げたとはいえ、自分のしたことは、队长の面目に泥を涂ったに等しい。
                        苏芳司は、きっと自分に失望しただろうなと思う。
                        「色々と……ご迷惑を……」
                        苏芳は、セイラに冷たい一瞥を投げ、そのまま歩み去って行った。
                        (written by 海法 纪光)


                        IP属地:上海来自iPhone客户端14楼2015-03-07 13:56
                        回复
                          2:世界の病
                          (2014年08月04日公开)
                          世界は病んでる。安定と平等の美名の元に、大势の人间が虐げられ、苦しんでいる。
                          悪人のせいではなく、大势の善人のせいで。
                          人々が幸せと安定を求める努力それ自体が、不幸に繋がるねじれたシステム。
                          苏芳司は己の身を一本のメスになぞらえる。
                          社会の病根を切り裂く银色のメスだ。
                          第十七极东帝都管理区。
                          そして、その背后にある巨大企业の支配制度。
                          その全ての根干となるランク制度。
                          それこそが、この世界の病であり、苏芳が摘出すべき患部だ。
                          苏芳が起つ日。
                          それは、优れた外科手术のように、最小限の痛みと、最小限の苦痛、最小限の时间で终わるだろう。
                          それでも血は流れることだろう。
                          戦いは避けられない。
                          同志が必要だ。
                          多くはいらない。
                          ほんの数人でいい——。
                          ——3时の方向より爆风。
                          オペレータの声に、司はうなずいた。
                          爆风の向こうに敌の彻の姿がちらりと见えた。
                          「援护を」
                          そう言って味方の彻が大地を蹴る。
                          吹き荒れる爆风に乗って彻は高く高く跳んだ。
                          司は、颜を軽く覆って爆风を避けると、无造作に上空へ拳铳を撃ち込んだ。
                          铳声に混ざって锐い金属音が响きわたる。
                          ——狙撃弾の迎撃を确认。
                          オペレータの声には、かすかな感叹の响きがあった。
                          头上では、二人の彻が、风に乗りながら踊るように撃ち合っていた。
                          敌の彻が、こちらの头上を取るために爆风を利用しようとした。
                          味方の彻もそれを察知してジャンプした。
                          だが、敌はそれを読んで狙撃手(オルガ)を置いておいた。
                          味方の彻は、それに気づいた上で、司に援护を頼み、司は狙撃弾を撃坠したというわけだ。
                          苏芳の见る限り、彻という男は基本的に慎重で坚実な人间である。
                          だが、この局面で敌に头上を取られていたら二人とも一方的に倒されていた。
                          それを悟ったからこそ、即座に跳んだわけだ。
                          身体能力の冴えだけではない。
                          必要な时に必要なことをやってのける决断力。
                          间违いなく切れる男だ。
                          あとは彻の心だ。
                          苏芳の味方についてくれれば良いと思う。
                          だが敌に回る可能性もなくはない。
                          苏芳は苦い想いと共に、一人の男を思い出す。
                          特殊部队AUMADでの记忆を。
                          (written by 海法 纪光)


                          IP属地:上海来自iPhone客户端18楼2015-03-07 14:02
                          回复
                            フロンティアS 绫小路咲良编
                            1:优しくて正直
                            (2014年08月25日公开)
                            「お父様、おくすりです」
                            「ありがとう、咲良」
                            「お病気、治る?」
                            「治るとも。咲良の持ってきた薬はよく効くよ」
                            父は、そう言って彼女の头を抚でた。
                            「ほんと? 咲良のお薬、よく効く?」
                            「効くとも。もう治ってきたくらいだ」
                            「あのね、お父様、咲良、お薬とどける人になる」
                            「看护师さんかい?」
                            「うん。病気の人、みんな、みんなに、お薬とどけるでしょ、そーしたら、病気でくるしい人いなくなる」
                            「それはいいね。咲良ならきっと良い看护师になるよ」
                            その日、そう言って头を抚でる父の手の温かさを、幼い绫小路咲良は胸に刻んだ。
                            绫小路咲良は、可爱いものが好きな、优しいお嬢様である。
                            绫小路家は、代々多くの学者や芸人を召しかかえ、「教养」と「文化」を提供する。
                            かつて戦国の世に武将たちが茶道に慰めを见いだしたように、フロンティアSの血に饥えた覇王たちも、绫小路家のもたらす文化の薫りを尊重し、それ故に、绫小路家の领地一帯は、不戦地帯となり、戦乱の大地フロンティアSの中で、例外的に平和な场所となった。
                            幼い绫小路咲良は、そんな平和な环境で、両亲の爱情を一杯に浴びて育った。
                            そのようにして彼女は世界に爱されて育ち、世界を爱するに至った。
                            唯一瑕疵があるとすれば、箱入り娘として育てられた结果、幼い时にあまり友人がいなかったことくらいだが、そのことは、むしろ彼女の爱情を凝缩し、强める方向に働いた。
                            绫小路咲良は、优しいお嬢様である。
                            世界中の人に薬を届けて苦しむ人を无くす。
                            そんな子供らしい思いつきを、忘れず持ち続けるほどに。
                            (written by 海法 纪光)


                            IP属地:上海来自iPhone客户端21楼2015-03-07 14:09
                            回复
                              2:穏やかで止まらない
                              (2014年09月01日公开)
                              「お父様、お闻きしたいことがあります」
                              「なんだね?」
                              灭多に无い娘の紧张した声に、父は居住まいを正した。
                              「お友达の中尾様がご病気で、わたし、中尾さんのお宅に、お见舞いにいってきました」
                              「そうか」
                              こっそりとため息をつく。来るべきものが来てしまった。
                              娘は箱入りに育てたつもりだが、いつかは世の残酷さに触れる时が来る。その时に、この优しい子は何を思うだろう。
                              それは长年の心配事だった。
                              「中尾様がご病気で、お薬は饮まれましたかと闻きましたら、お薬を买うお金がないとおっしゃって」
                              「中尾さんというのは、どちらの方かね?」
                              「お友达です。最近、よく游びます」
                              ——「外」で会った贫乏人か。
                              おおかた、うちの娘にたかるつもりか。
                              そんな気持ちは表さず、笑颜を作って応える。
                              「そうか。咲良の友达ならば、すぐに薬を届けさせよう」
                              その言叶に、咲良は微笑んだ。
                              「いえ、お父様、そうではないのです。外には、中尾様のように、お薬や、ごはんや、お水を买うお金がない方がたくさんいらっしゃるそうです。一体、どうしてこのようなことになっているのでしょうか?」
                              「ふむ、それはだね」
                              いつかは、こんな日が来るだろう。そう思って、父亲は、咲良への答えを准备していた。
                              すなわち、资源は限られており、谁もが幸せにはなれないこと。
                              自分や咲良が恵まれた生活をしているのは、世の中の秩序を守っているからであり、その分、未来を良くする责任を负っているのだとも。
                              咲良は神妙に闻いて、やがて口を开いた。
                              「どうしたら、世界はよくなるのでしょうか。足りない资源を増やすことができるのでしょう」
                              「まずは戦いを止めて治安をよくすることだね」
                              「泥棒さんを捕まえればいいんですね」
                              「そうだな」
                              戦乱をくい止めるのは、领主である自分たちの政治的手腕であり、犯罪を食い止めるのは警备组织である、と、父亲は说明する。
                              「なるほど。わかりました」
                              咲良は晴れ晴れとした颜で言った。
                              「では、わたし、警备の人になります」
                              「いや、何を言っている」
                              晴れ晴れとした颜で言い切った娘に、父亲は我知らず叫んだ。
                              「えっと、わたし、政治向きじゃないじゃないですか。そういうのは、お父様やお兄さまがいますし。そうすると、警备の道がいいかなって」
                              「いやしかし、おまえがそんなことをしなくても……」
                              娘がペースを取り戻すにつれ、父の口调に焦りが见えた。
                              「だって、ほら。恵まれた生活を送る私たちは、未来を良くする责任があるってお父様言ったじゃないですかー」
                              咲良はにっこりと笑った。
                              绫小路咲良は、优しく、穏やかで、怒ることがない。
                              しかし穏やかで优しいことは、意志が弱いことを意味しない。
                              绫小路咲良は、これと决めた时は、とても、とても、顽固になることができる。
                              そのことを父亲は思い知ることになる。
                              (written by 海法 纪光)


                              IP属地:上海来自iPhone客户端22楼2015-03-07 14:10
                              回复