2016年1月7日16時30分
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え・和田誠
今年は僕にとっては大河ドラマ「真田丸」の年。一年以上前から執筆作業に入っていた全五十話の物語が、いよいよオンエアされる。
前回、「新選組!」を書いたのが二〇〇四年。なにかの記事に、大河ドラマを複数書いた脚本家は何人かいるが、すべて一本目で大成功を収めた作家が、その勢いで二本目をオファーされるパターン、一回失敗しているのに再度依頼されたのは、三谷が初めてだと書いてあった。僕には「新選組!」が失敗作という認識はまるでなかったので、びっくりした。いろいろ試行錯誤はあったけど、面白いドラマになったと思っているし、いまだにビデオで繰り返し観(み)ているというファンの声もよく聞く。
当時は、隊士たちの実年齢に近い若い俳優を揃(そろ)えたので、大御所スター総動員の歴代大河ドラマの中で異質だったのは間違いない。DVDが発売になった時、僕は解説文に「オンエア時は、知らない役者ばかりだったかもしれないが、十年後、この作品を観直したら、なんてオールスターキャストなんだろうと驚くはず」と書いた。そして実際その通りになった。彼らは、今やドラマ、映画、舞台に欠かせない中堅俳優に成長。参議院議員までいる。確かに視聴率はそれほどでもなかったけど、結局そこで「失敗作」と判断されてしまうのは、少し淋(さび)しい。まあ、それが今のテレビ界なので、仕方ないか。
失敗だったかそうではなかったかは、さておいて、あれから十二年を経て、またNHKさんから声を掛けて頂けたことには、心から感謝しています。スタッフにも出演者にも、「新選組!」のメンバーが沢山(たくさん)いる。なにより主役は、かつて新選組副長山南敬助を演じた堺雅人さんである。「笑顔で喜怒哀楽を表現する男」と評された彼(僕が評したのですが)が、今度は戦国最強の武将と謳(うた)われる真田信繁を演じる。
屈強な侍のイメージがある信繁だが、実際は物静かな人で、兄の信之が残した文章の中にも、「怒ったところを見たことがない」と書かれているくらい。それを知った時に、僕の頭の中で真田信繁が堺雅人と繋(つな)がった。
「新選組!」の時は初の大河ということで、なんだか無我夢中だった記憶しかないが、今回は僕も大人になりました。あの時の経験を踏まえて、さらに面白いドラマにしようと思っている。
ひとつだけ気がかりなのは、前回、かなり真面目に書いたつもりだったのに、作者のイメージが先行して「荒唐無稽」「ふざけ過ぎ」「お笑い大河」などと呼ばれてしまったこと。今回はそうはならないようにしたいが、実はあの頃、僕はまだ映画のキャンペーンで、さほどテレビに出まくっていなかった。むしろ今の方が僕の「恥知らず」のイメージは強くなっているはず。それがドラマにどう影響を与えるか。
前もって断っておくが、「真田丸」は真面目な大河ドラマです。前作同様、ユーモアはあるけど、それは味付け程度。一年間、皆さんを生きるか死ぬかの戦国の世へお連れします。
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え・和田誠
今年は僕にとっては大河ドラマ「真田丸」の年。一年以上前から執筆作業に入っていた全五十話の物語が、いよいよオンエアされる。
前回、「新選組!」を書いたのが二〇〇四年。なにかの記事に、大河ドラマを複数書いた脚本家は何人かいるが、すべて一本目で大成功を収めた作家が、その勢いで二本目をオファーされるパターン、一回失敗しているのに再度依頼されたのは、三谷が初めてだと書いてあった。僕には「新選組!」が失敗作という認識はまるでなかったので、びっくりした。いろいろ試行錯誤はあったけど、面白いドラマになったと思っているし、いまだにビデオで繰り返し観(み)ているというファンの声もよく聞く。
当時は、隊士たちの実年齢に近い若い俳優を揃(そろ)えたので、大御所スター総動員の歴代大河ドラマの中で異質だったのは間違いない。DVDが発売になった時、僕は解説文に「オンエア時は、知らない役者ばかりだったかもしれないが、十年後、この作品を観直したら、なんてオールスターキャストなんだろうと驚くはず」と書いた。そして実際その通りになった。彼らは、今やドラマ、映画、舞台に欠かせない中堅俳優に成長。参議院議員までいる。確かに視聴率はそれほどでもなかったけど、結局そこで「失敗作」と判断されてしまうのは、少し淋(さび)しい。まあ、それが今のテレビ界なので、仕方ないか。
失敗だったかそうではなかったかは、さておいて、あれから十二年を経て、またNHKさんから声を掛けて頂けたことには、心から感謝しています。スタッフにも出演者にも、「新選組!」のメンバーが沢山(たくさん)いる。なにより主役は、かつて新選組副長山南敬助を演じた堺雅人さんである。「笑顔で喜怒哀楽を表現する男」と評された彼(僕が評したのですが)が、今度は戦国最強の武将と謳(うた)われる真田信繁を演じる。
屈強な侍のイメージがある信繁だが、実際は物静かな人で、兄の信之が残した文章の中にも、「怒ったところを見たことがない」と書かれているくらい。それを知った時に、僕の頭の中で真田信繁が堺雅人と繋(つな)がった。
「新選組!」の時は初の大河ということで、なんだか無我夢中だった記憶しかないが、今回は僕も大人になりました。あの時の経験を踏まえて、さらに面白いドラマにしようと思っている。
ひとつだけ気がかりなのは、前回、かなり真面目に書いたつもりだったのに、作者のイメージが先行して「荒唐無稽」「ふざけ過ぎ」「お笑い大河」などと呼ばれてしまったこと。今回はそうはならないようにしたいが、実はあの頃、僕はまだ映画のキャンペーンで、さほどテレビに出まくっていなかった。むしろ今の方が僕の「恥知らず」のイメージは強くなっているはず。それがドラマにどう影響を与えるか。
前もって断っておくが、「真田丸」は真面目な大河ドラマです。前作同様、ユーモアはあるけど、それは味付け程度。一年間、皆さんを生きるか死ぬかの戦国の世へお連れします。