
王妃の館」で作家役、宙組トップ・朝夏まなと 「作り手目線」で視野広げ
毎日新聞2017年2月6日 大阪夕刊
浅田次郎原作の長編小説「王妃の館」がミュージカルになり、宙(そら)組が宝塚大劇場で上演している。個性の強い人物ばかりが登場するコメディーで、トップスターの朝夏(あさか)まなとはとりわけ風変わりな作家の北白川右京を演じる。「漫画に置き換えたらどんな感じかを考えた。右京は変人だけど、宝塚的にはどこまで変わっているところを出してもOKなのか、バランスを考えている」と語る。
仏ルイ14世が残し、高級ホテルとして使われているパリの「王妃の館」を舞台に、旅行客たちが繰り広げる物語。朝夏は「宝塚では現代の日本人を演じることがあまりなくて新鮮な感じ。セリフも普段の会話のようなので、逆に覚えにくかった」と苦笑する。
2014年、「翼ある人びと」で作曲家のブラームスを、16年は「シェイクスピア」で劇作家のシェイクスピアを演じた。宙組の後輩から「よく『書けない!』というセリフを言っていますよ」と指摘されたという。作品を生み出す創造的な役が多いことで、「ただ与えられたものをやるだけではなく、作り手の立場で考えるようになり、視野が広がった」と話す。

今回脚本と演出を担当する演出家、田渕大輔の大劇場デビュー作ということもあり、稽古(けいこ)中は田渕と意見を交わしながら作り上げた。トップに就任して2年。「王家に捧(ささ)ぐ歌」や「エリザベート」などの大作を経て、心に余裕ができてきたという。「大劇場の中心で3時間の公演を務める体力がついて少し楽になったし、いろんな役を通じて内面的にも幅広くなった」と充実した表情を見せた。【田中博子、反橋希美】