「ニュース見てない? 一応まだ無敗なんだけど」
「そうじゃなくて……その……」
淡は目を逸らして、決まりが悪そうに髪を弄り始めた。
意味がわからず、そんな彼女の様子を見ながら黙々と箸を動かしていたが、しばらくしてようやく理解できた。姿勢を正して、ソファの隣に座った淡に顔を向けた。
「――つまり、私が浮気してないかってこと?」
その率直な言い回しに、一瞬、彼女の動きが止まった。どうやら図星だったらしい。
プロ入りしてからは会える機会も少なくなって、しかしそれでいて照は別の輪の中に囲まれるようになった。淡も淡で思うところがあったのだろう。だから柄にもなく料理の勉強なんかしたりして、照の役に立とうとしたのだ。
つまるところ彼女は、「テルはチーム内でどうなの」と訊きたかったのだ。だけども、そんなことは答えるまでもなく決まっている。
「大丈夫。浮気なんてするわけない」
彼女の身体を抱き寄せる。
「淡が一番だよ」
「ほんとに?」
「本当」
「でも、私より強い人いるでしょ?」
照は微かに苦笑する。
「それでも。それとも、そんなに信用ない?」
「――ううん」
照の胸の中で淡がかぶりを振る。すると、まるでそれによって振り撒かれたかのように、いい匂いが鼻腔に滑り込んでくる。
「淡……」
淡の顎を持ち上げて、またも不意打ち気味にキスをした。
「ん――っ」
そしてそのままそっと、彼女をソファに押し倒す。唇を離すと、すぐ近くに彼女の顔。当惑と若干の怯えとが入り混じり、しかしながら期待が滲み出ているような、そんな複雑な表情――
「最近会えなくて、淡分が不足してるから、補充させて」
言いながら、太腿に指を這わせる。淡は軽く悲鳴を洩らしたが、その顔にはもう迷いの色は差しておらず、むしろ次の瞬間には、どこか蠱惑的な艶笑さえ浮かべて、今度は彼女の方から唇を重ねてきた。
「私も……」
続く言葉は、ちょっと拗ねたような口ぶりで。
「私にもテル分くれないと嫌だからね」
こくりと頷いて、照は行為を進めようとしたが、
「でも……まずはご飯食べよう?」
「……」
照がぴたりと動きを止めた。憮然とした表情で黙り込む。
さっきあんな話をしたばかりだからか、淡は慌てて付け足す。
「せっかく作ったんだから、あったかいうちに食べてほしいし」
「……」
「ね?」
宥めるようなまなざしを向けてくる淡。
「……淡」
やがて、照がおもむろに口を開いた。
「誘ってるようにしか聞こえない」
「はああ!?」
言い返そうとする口を塞いで、より強くソファに押し付ける。
「も、う……っ」
言葉とは裏腹に、淡ももう抵抗せず、照の身体に脚を絡ませる。
「淡……」
「テル……」
まるで瞳でキスを交わし合うかのように見つめ合い、しばらくすると我慢がならないといったふうに唇を求め合う。それを幾度も幾度も繰り返して、全身の火照りを共有して――そして二人は、更けていく夜に、身も心も沈めていった。
「そうじゃなくて……その……」
淡は目を逸らして、決まりが悪そうに髪を弄り始めた。
意味がわからず、そんな彼女の様子を見ながら黙々と箸を動かしていたが、しばらくしてようやく理解できた。姿勢を正して、ソファの隣に座った淡に顔を向けた。
「――つまり、私が浮気してないかってこと?」
その率直な言い回しに、一瞬、彼女の動きが止まった。どうやら図星だったらしい。
プロ入りしてからは会える機会も少なくなって、しかしそれでいて照は別の輪の中に囲まれるようになった。淡も淡で思うところがあったのだろう。だから柄にもなく料理の勉強なんかしたりして、照の役に立とうとしたのだ。
つまるところ彼女は、「テルはチーム内でどうなの」と訊きたかったのだ。だけども、そんなことは答えるまでもなく決まっている。
「大丈夫。浮気なんてするわけない」
彼女の身体を抱き寄せる。
「淡が一番だよ」
「ほんとに?」
「本当」
「でも、私より強い人いるでしょ?」
照は微かに苦笑する。
「それでも。それとも、そんなに信用ない?」
「――ううん」
照の胸の中で淡がかぶりを振る。すると、まるでそれによって振り撒かれたかのように、いい匂いが鼻腔に滑り込んでくる。
「淡……」
淡の顎を持ち上げて、またも不意打ち気味にキスをした。
「ん――っ」
そしてそのままそっと、彼女をソファに押し倒す。唇を離すと、すぐ近くに彼女の顔。当惑と若干の怯えとが入り混じり、しかしながら期待が滲み出ているような、そんな複雑な表情――
「最近会えなくて、淡分が不足してるから、補充させて」
言いながら、太腿に指を這わせる。淡は軽く悲鳴を洩らしたが、その顔にはもう迷いの色は差しておらず、むしろ次の瞬間には、どこか蠱惑的な艶笑さえ浮かべて、今度は彼女の方から唇を重ねてきた。
「私も……」
続く言葉は、ちょっと拗ねたような口ぶりで。
「私にもテル分くれないと嫌だからね」
こくりと頷いて、照は行為を進めようとしたが、
「でも……まずはご飯食べよう?」
「……」
照がぴたりと動きを止めた。憮然とした表情で黙り込む。
さっきあんな話をしたばかりだからか、淡は慌てて付け足す。
「せっかく作ったんだから、あったかいうちに食べてほしいし」
「……」
「ね?」
宥めるようなまなざしを向けてくる淡。
「……淡」
やがて、照がおもむろに口を開いた。
「誘ってるようにしか聞こえない」
「はああ!?」
言い返そうとする口を塞いで、より強くソファに押し付ける。
「も、う……っ」
言葉とは裏腹に、淡ももう抵抗せず、照の身体に脚を絡ませる。
「淡……」
「テル……」
まるで瞳でキスを交わし合うかのように見つめ合い、しばらくすると我慢がならないといったふうに唇を求め合う。それを幾度も幾度も繰り返して、全身の火照りを共有して――そして二人は、更けていく夜に、身も心も沈めていった。