キャバクラで楽しんだことないですもん、楽しませてばかりで
ガイド:
最近はどんな夜遊びをされてるんですか?
やべ:
ダーツに嵌ってますね。六本木にいい店をみつけて、よく店員のオネーチャンと「勝ったら電話番号ね!」なんて冗談を言いながら勝負をするんですけど、一回も勝ったことがないっていう(笑)。ダーツって精神的なゲームなので、集中力が非常に大事なんですよ。
ガイド:
あっ、エッチが頭に浮かんで集中できない(笑)。
やべ:
そう。またピチピチのTシャツにホットパンツのようなイヤらしい格好をしてるんですよ。だから完全に集中力を乱されまくりで。『クローズZERO』でもダーツのシーンがあって、撮影の合間に共演者たちとみんなで遊ぶんですけど、撮影本番は完璧なのに夜の本番ではハズしまくりですね(笑)。
ガイド:
その鬱憤を晴らしにオネーチャンのいる店に行ったり?
やべ:
自分からはあまり行かないですけど、打ち上げで「キャバクラに連れていって下さい」的なビームは出しますね(笑)。飲み屋では僕の鉄板ネタがあって、まず名前を聞く前に「美しいっていう字が付くよね」から入って、付かなければ「うそ! 名は体を表すって言うのに。美しいって付かないわけないじゃん」って。それで「ユウコです」って返ってきたら「優しいっていう字? やっぱりな、優しさが滲み出てる。オレにも優しくして!」とか(笑)。あとは「ユウコ? やっぱりな、死んだじいちゃんがユウコっていう名前に悪いコはいないって言ってたもんな」なんて。で、みんなに「生きてるだろ!」ってツッこまれるんですけどね(笑)。
ガイド:
でもソレ、たいていヤレないパターンですよね(笑)。
やべ:
はい。それで口説けたことは1回もない。いつも「面白い人」で終わるっていう(笑)。キャバクラで楽しんだことないですもん、楽しませてばかりで。だから『クローズZERO』で合コンのシーンがあるんですけど、あれは全部アドリブです。監督も「やべさんが面白くしてくれるから、リハーサル無しで行きましょう」って(笑)。
ガイド:
そんなやべさんの生き方すべてが『クローズZERO』の「片桐拳」役に要約されていますね。
やべ:
そうですね。脚本家の武藤さんにも「役作りしなくても普段着のやべさんのママでいいんじゃないですか」って言われたんですけど、「ノンフィクションじゃないんで、ちゃんと役者として演じさせてください」ってお願いしたくらいで(笑)。でも、オレの中で「片桐拳」はダメ人間だと思ってます。人に言われたことも出来ない、自分でも決められない、何か目標があるわけでもない、ましてや他人に自分の夢を勝手に背負わすという。ただの救いのないヤツだなぁ、と。
ガイド:
でも、「片桐拳」は正義感だけはあったわけですよね。
やべ:
はい。正直でいることがどういうことか、というか。でも、大人になって『クローズZERO』に自分を投影しているようではダメだと思うんですよ。仲間を大切にしたり、人との繋がり、絆、痛みを分かる人間にならないと人生、「片桐拳」みたいになっちゃうよって。だから格好付けるのはいいけど、中途半端は止めなさい。それでダメだと分かったら、ちゃんと引きなさいっていう。当たり前のことだけど、それをするって本当に難しいことだと思うから。映画を見て「オレは片桐拳にならない」って思ってくれたら嬉しいかなぁ(しみじみと)。
ガイド:
役者も遊びも、不良するにしても振り切れ、と。
やべ:
そうですね。「今が良ければいい」っていう生き方が大嫌いなんです。昨日より今が良くありたいし、今より明日って思いたいし、常に一歩でも半歩でもネクストを大切にしたい。人生、走るだけじゃダメだと思うし。振り返ったときに、人生、何だったかって忘れてもいけないと思うんで。ただ「片桐拳」の場合は、進んでないから。とにかく一歩踏み出して欲しいし、主役の小栗旬くんが演じる「滝谷源治」の場合は何がてっぺんなのかを探しながら動いていて、他の不良連中も明日に向かって歩き出している。みんな上も下も右も左も見ながら演じている作品だと思うんで。男にはスクリーンの中の誰かに自分を投影して何かを感じてもらいたいし、女性の方には「男ってこういう生き物なんだ」と、少しでも理解してもらえればいいと思う。
ガイド:
(恥ずかしそうに)僕も『クローズZERO』を見て、若い頃、やべさんも出演されていて、役者で食いたいと思うきっかけになったという『キッズリターン』を見たときのことを思い出しました。「バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ」っていう。
やべ:
ただ、僕が一番心配しているのは、映画を見て「片桐拳が最高、素敵!」っていう女性は注意して欲しいな、と。こんなヤツを好きになったら男で人生をダメにするって(笑)。
ガイド:
でも、ハッキリ言ってやべさんが演じる「片桐拳」は素敵です。女性はもちろん、男でも惚れちゃいますよ(笑)。
やべ:
(ニャッとして)嬉しいねぇ。でも、本当のオレは「片桐拳」と違って本気で生きているから。実は、普段はお酒を全く飲まないんですよ。でも酒の席では自らガブ飲みして、真っ先に酔いつぶれる。なんか中途半端に断るって場をしらけさせるのが嫌なんで。『クローズZERO』のときも大阪のキャバクラに撮影スタッフと飲みにいって、飲めないくせに毎回違うメンバーを連れて5日連続で通ったんですけど、最終日に店長からドンペリをプレゼントされたからね。「毎日来てくれてありがとうございました」って(笑)。
ガイド:
ワハハハ! 女のコのウケはいいわ、お金は落としてくれるわ、その上、真っ先に酔いつぶれるっていう。「この人はいったい何者なんだ!?」って(笑)。
やべ:
そうそう。苦しくても楽しくっていうか、常に一生懸命で、それでいてサービス精神も忘れずにいたい。チャラチャラとルンルンは違うからね!
インタビューを終えて

映画『クローズZERO』や「人生感」を真剣に語っていたかと思えば、最後はキャバクラでの夜遊び談をしてくれたり。取材後に「嘘八百はただの嘘ツキだけど、嘘八億まで来ると本当に面白いヤツになれる」なんて座右の銘を教えてくれたかと思えば、2分後にはまた新たな座右の銘を語りだしたり…。
この部分だけを抜き出せばただのお調子者のようにも聞こえるが、その徹底したやりたい放題ぶりはいつ、何時も自ら作り出した「やべきょうすけ」本人のイメージを演じているように思うし、ティーンの頃から限りなく直角に生きた人間・「やべきょうすけ」の現実を凌駕せんとするフィクションのようにも思う。なんだか分かりにくいが、つまり、俳優に全力投球するも「やべきょうすけ」であり、キャバクラで全力投球するのも「やべきょうすけ」なのである。そこに優劣の差は生まれない。
そして『クローズZERO』での"愛すべきバカ"っぷりは、ヤンキー直撃世代ならずとも目頭が熱くなること間違いなし。救いようのないチンピラ役なのに、なぜか登場人物の中で最も印象深い大人に映るのは、「やべきょうすけ」の人間力あってこそだろう。
最後に「この人は近い将来きっと、映画賞を総ナメにするような名俳優になる」なんて、チンピラというかきんぴらな風の僕が願望的希望を言って、終わりにしたい。
人間、やれば出来る! (了)